PARAMUSHIR 感想のような雑記

赤坂actにて、3/16と3/20の2回を見た感想です。備忘録的な意味と、あわよくば読んでくださった方との意見交換などができたらという淡い期待を込めて。ネタバレのオンパレードなので、WOWOWやDVD待ちの方はUターン推奨です。思いのままの殴り書き。長いし読みにくいし、長いです。あくまで個人の感想なので悪しからず。


① さいしょ
 TEAMNACの舞台だー!!って感じがして大好きでした。皆が求めていたものを要求以上に素晴らしく返した感じがしました。森崎博之すごすぎ。史実が元になってるという事で多方面に慎重になって行くであろうところを、伝えたい部分とエンターテインメントの部分を上手く配合して作られていました。パワー!勢い!テンション!の部分は忘れずに、でも骨太な心に響く舞台です。すごい好き。アンサンブルの皆さんの見せ場もありながら、丁寧に5人だけのシーンも作られていたところが最高だなと思いました。
 あと、演出家・森崎博之のすごさ。ファンが求めてるドラマチックでダイナミックな舞台を完璧に作り上げてる。森崎博之の凄さって、人の心の揺さぶり方を知ってる所だと思うんです。プラスにもマイナスにも(喜怒哀楽的な意味で)、100どころか1万ぐらいメーター振り切れんばかりに振り回されてしまう。ぶるんぶるん。観客の私たちは思いきりそれに振り回されて、でもそれが気持ちいい。心が震えるってこういう時に使うんだ、と実感した舞台でした。


② ひとりひとり

②.1 音尾さん(矢野さん)
 正直、最初に見た時は「もう少し掘り下げても良かったんじゃ…」と思ったのが矢野さんでした。でも違った。1回目は2階の最後列で表情とかが細かく見れなかったんですけど、2回目で表情が見える位置で見たら矢野さんの破壊力すごかった。目の泳ぎや声の震え、戸惑いながらの動き、当然なんだけど全部が矢野さんのものだった。音尾琢真恐ろしい子
 山下の幻覚って実は最初からいたんだ、って事に2回目でようやく気づきました。玉音放送後に徹底抗戦唱える矢野さんに「おかしくなったのか」って下士官のセリフ、徹底抗戦を唱えること自体を揶揄してると思ってたけど、幻覚の山下に声をかけてる事に対してなんですね。そういうシーンが沢山あって、それを一つ一つ回収していくと「なるほどなぁ」ってなる。みんなが故郷や家族語りするところでも、矢野さんは台詞数としては少ない。それって「死に場所を探している」矢野さんだからなのかな、と思ったり。考えを深めたい奥行きのあるキャラクターになってる。こういう、台詞だけじゃないところで魅せていく役を任されたら音尾さんは輝くよねぇ。幻覚の山下と対峙するシーンは私が好きな音尾琢真が詰まってました。最高すぎるし、多くは語るまい。
 あと個人的に好きだったのは水島軍曹が田中に水をあげて慰めるシーンで「なぜそのような優しい言葉を?」って問いかける所。情けないとか否定的じゃなくて優しいってチョイスがさぁ、矢野さんも本当は優しい言葉をかけて欲しかったの?って。完全に個人の考察の域だけど、もしそうなら所々に見え隠れする認めて欲しさを出すのが上手い。最後の「僕から行かせてください」と言った矢野さんの心に少しでも後悔が少なくあればいいと思いました。すごく、寄り添ってあげたくなる人でした。


②.2 大泉さん(水島軍曹)
 大泉さんにこの役やらせるのはずるいよぉってボロボロ泣きました。本物の大泉さんにリンクする部分が多くて、見ていてしんどくなりました。水島哲に戻って戦場にいるのは、辛かっただろうなぁ。当然笑いのシーンも多いけど、多い分その明るさの影が濃く深く見えて彼が笑っているのを見るのも最後はしんどかった。特に前半は水島軍曹に感情移入しながら見てた気がする。今回、大泉さんの台詞で場面が転換する事が多かったんだけど、その時の余韻の取り方が好きでした。「家に…帰れるのか…?」みたいなやつ。
 終盤の他部隊と一緒になる時に「あの小宮勝四郎がついてる!運がいいぞ!」ってセリフが最高に水島哲っぽくて好きです。たぶんあの中には小宮さんを知らない人も多かっただろうに、軍曹という立場から言い切って部隊をまとめて小宮さんを無名では終わらせないようにしてる。5人でチハを囲んで話してる時に、話の回し役になってるあたりも素敵な上官を思わせる。気が使えたり、優しかったりする分、苦労が多そうな役回りっぽいけど。40代になったNACSを…って題材的にもそうだけど、役柄的にもそうで、特に大泉さんはそれを感じました。ほんと、いい人なんですよ水島さん。


②.3 戸次さん(田中さん)
 こういう戸次重幸の役が見たかった!私の中の需要と供給が完全に一致した役でした、田中さん。ハーモニカを凄い大事そうに持ってるのが可愛くて、うるせぇ!って取り上げられた後にちゃんとお袖でゴシゴシ拭いてるんですよね。きゅーと。あと水島軍曹に「"お"水ありがとうございました」って言う田中さん。少し可愛げがあるように下から出るの、捨て子の彼なりの処世術なのかと思ったりして。
 役どころとして、実際に小さいお子さんがいる戸次さんが子供に会えないまま亡くなっていった田中さんを演じるのは酷に思えました。家族っていいもんですかね?って聞く田中を演じる戸次さんの中には答えがあるんだもん。お母さんは音楽家で…ハーモニカで会ったことない母と息子が繋がって…って所は戸次重幸が田中さんで良かったと思いました。割とNACS内では誰がどの役やっても…という話が雑誌記事とかで見てたけど、田中はシゲ以外に考えられないと思っちゃう。
 田中さんで心を打たれたのは、桜庭さんに映画のあらすじを教えてもらうシーン。最初はお尻つけないで座ってるんだけど「幸せは続かず、不幸が訪れる」って所でちゃんと座る。幸せな場面でなく不幸になる場面で自分と重ねる田中の気持ち。戸次さんの中で計算し尽くされた動きであるだろうと考えながら、一挙手一投足に目が離せない人でした。


②.4 安田さん(桜庭さん)
 あぁ、安田さんの役だ。って感じでしたね。あの最後の独白なんかは安田さんにしか出来ない。そう思った。というか、そう思わされた。というべきか。
 桜庭さんが女子従業員から花をもらって胸ポケに仕舞う、あの"大事そう"な演技がすごく好きです。ガダルカナル島の話をする時に"事実を話してるだけ"って感じがするの、凄いなあと思って見てました。なんていうか、泣けない男が上手に表現されているというか(伝われ)。かと思えば故郷の話をするときは、あんなに穏やかな声色なんです。ほんとは優しくて不器用な人ってのが痛いほど伝わる。比較的、矢野さんや田中さんに優しげなのは彼らが年下だからでしょうか。矢野さんは幻覚を見たり、少し不器用なところを自分と重ねてたのかも知れないですね。
 あと割とどうでもいいんですけど、歳をとった桜庭さんが登場するの割とびっくりしました。あれ、最初はいなくて「国境警備隊に睨まれますよー」で帰ってくる時に桜庭さんが増えて戻ってくるんですね。なんかよく分からん動きとセリフだなーと思ってたんですけど(失礼)2回目で納得しました。
 最後のシーンでなけたじゃないかって水島さんが言うの、お客さんは見えるけど桜庭さん本人には全く見えてないんですよね。結局桜庭さんは、死ぬまで少しも心の重しが軽くなることなく全てを背負って生きていかなきゃいけない人。大変な役で、今回のお話で凄く心を揺さぶられた役は桜庭さんだけど、上手く表現できる語彙力を持ち合わせていないです。少しでも心安らぐ瞬間が多くあればいいのにと、幸せを願いたくなる人でした。


②.5 森崎さん(小宮さん)
 いちばんすき(直球) なかなか小宮上官から小宮勝四郎にならなくて、頑なで正義感や責任感が強くてって、森崎博之以外に誰がやるのよって役だったと思います。ようやく小宮さん本人が見え隠れするのも、皆の故郷話でつい自分も話したくなっちゃったって感じで好きだったなぁ。本当に軍の上官に向かないし、戦争に向かない人でしたね。前半のどこかセリフを言ってるように聞こえる言い回しも、自分の言葉じゃなくて"自分が想像する上官の言葉"だったからなのかと思います。
 これは森崎さんだけど、矢野さんに銃を向ける顔がかっこよすぎてびっくりした。みんな見て。DVDに収録されている事を願うばかりです。あと「お前らは音痴だなぁ!」のセリフの後の会場の少しほっとした笑いが凄い好きでした。5人のシーンは多いし笑いのシーンもあるけど、全部が戦いの中の一コマでしかなくて何を言っても後の戦いが頭をよぎる。そんな中で安心して笑えたのがあそこだったって話なんでしょうけど。
前半は命令待った聞いてもらえなくて、その台詞自体がギャグみたいになったけど、終盤に同じ言葉なのに響いてくるのはお話の力だと思いました。終盤の「さいごぐらい命令を聞け!」のさいごの文字は、最後なのか最期なのか。謎解きのために、台本を言い値で構わないので買いたい。終盤の小宮さんは軍隊の上官には向かないけど、リーダーとしては輝く人って感じがすごく出てましたね。とにかく、いちばん大好きなキャラクターが小宮さんでした。


③ さいご
 とにかくダラダラ書いたけど、言いたい事はPARAMUSHIRが最高の舞台だったってことです。笑って、泣けて、見終わったあとも心の片隅にずっとある、そんな話。私はあの島で戦いがあったことすら知らなかったけど、きっと世界には埋もれてしまった戦いの跡地がきっと沢山あるんだと思います。そこから数十年の時間が流れて私たちが生きてる今がある。時の流れってよく言うけどあれって、一本の線になってるんだと、そういう過去との繋がりを感じさせる作品でした。心の奥に、ずしーーんと響くけどそれが心地よい、みたいな。あれ、やっぱり語彙力が貧困。凄い好きな作品のひとつになったから、色んな人と感想を持ち寄ってプレゼンとかしたいですね。